1. LPガスとは何か
LPガス(Liquefied Petroleum Gas/液化石油ガス)はプロパン(C3H8)とブタン(C4H10)を主成分とする可燃性ガスの総称です。
主成分がプロパンなら「プロパンガス」、ブタンなら「ブタンガス」と呼ばれます。
高圧ガス保安法では「炭素数3または4の炭化水素を主成分とするガス」と定義されています。
2. 化学・物理特性の比較
項目 | プロパン | ブタン | ||
---|---|---|---|---|
数値 | 特徴 | 数値 | 特徴 | |
沸点(℃) | −42.1 | 低温でも気化しやすい | −0.5 | 0 ℃付近で液化しやすい |
ガス比重(空気=1) | 1.52 | 空気より重い | 2.0 | さらに重い |
発熱量(MJ/m3) | 99.4 | 高カロリー | 128.6 | さらに高カロリー |
液→気体膨張率 | ×273 | ボンベ内で大きく膨張 | ×238 | 同上 |
寒冷地や高火力用途にはプロパン、常温域の可搬用途にはブタンが有利です。
3. 用途別の向き・不向き
3‑1 家庭・業務用燃料
日本の家庭で契約する LP ガスはプロパン主体(プロパン+少量ブタン)。
沸点が低く冬でも安定して気化し、給湯器・床暖房など高火力機器にも対応できます。
3‑2 アウトドア・カセットボンベ
カセットコンロや使い捨てライターは常温液化しやすいブタンが主流。
ただし0 ℃以下では気化不足(ドロップダウン)を起こしやすいため、寒冷地用ボンベはイソブタンやプロパンを30~50 %混合して対策します。
3‑3 工業・オートガス
鋳造炉・乾燥炉など工業用燃料やタクシーの L P G 車では、高カロリーで気化管理が容易なブタン比率の高い混合ガスが使われます。
4. 料金・市場動向
LP ガスは原油精製副産物と天然ガス分離の両ルートで生産され、輸入先は中東・北米が中心です。
2024 年末から 2025 年初頭にかけて原油価格の下落と円高を受け卸価格が前年比約 8 %低下しました。
ただし小売価格は地域差・契約形態(貸与・売買)により 2~3 倍の開きがあり、ガス会社比較や料金診断が欠かせません。
5. 安全・環境ポイント
5‑1 安全性
プロパンもブタンも毒性はありませんが、空気より重いため漏洩時は床面に滞留します。
屋内で扱う際は低所換気とガス警報器の設置が必須です。
5‑2 環境性能
燃焼時の CO2 排出原単位はガソリンより約 10 %低く、SOx・PM もほぼゼロ。
石油系燃料の中ではクリーンエネルギーに位置付けられています。
6. 選び方早見チャート
気温 0 ℃未満で使用 → プロパンまたはプロパン混合
常温で携帯性重視 → ブタン主体
家庭の主燃料 → プロパン(LP ガス契約)
業務・工業・車両燃料 → 用途に応じたブタン比率ガス
7. よくある質問
Q1 都市ガス(メタン)と比べて高いのはなぜ?
LP ガスはボンベ配送・充てんコストがかかり、自由料金であるため販売店ごとに価格差が大きいからです。
Q2 プロパンとブタンを家庭で自由に選べる?
日本の家庭用 LP ガスは法令でプロパン主体と定められており、ブタン 100 % を供給することはほぼありません。
Q3 ガス漏れが玉ネギ臭いのはなぜ?
本来無臭の LP ガスに安全上着臭剤(硫黄系化合物)を添加しているためです。
8. まとめ
プロパンとブタンは同じ LP ガスでも物性・適性が異なるため、用途・気温・コストを総合して選択することが大切です。家庭のガス料金が適正か気になる場合は、ガス料金無料診断で現在の単価と使用量をチェックし、必要に応じてガス会社の切替えを検討しましょう。
参考文献・出典
この記事が役立ったらぜひ SNS でシェアしてください!