温対法(地球温暖化対策推進法)や省エネ法の報告書を作成するときに不可欠なのが、都市ガスの換算係数(熱量→エネルギー量)とCO2排出係数(使用量→排出量)の最新値です。
本記事では、2025年4月時点で公表されている令和7年度提出(令和6年度実績)用の係数を中心に、取得方法・計算式・注意点をまとめました。
1. 換算係数・排出係数とは?
まずは2つの係数の役割を感覚的につかみましょう。
- 換算係数(熱量換算係数)= “エネルギーのものさし”
ガスメーターは体積(m³)でしか教えてくれません。
しかし省エネ法の報告書ではエネルギー量(GJ や kWh)で書く必要があります。
そこで登場するのが「換算係数」。
1 m³ のガス × 0.045 GJ/m³ = 0.045 GJ
──この 0.045 が“体積をエネルギーに置き換える倍率”だと思ってください。
- CO2排出係数= “排ガスのものさし”
ガスを燃やすと必ず CO2 が出ます。
環境報告書では排出量(t-CO2)を示す必要があるため、
「体積 → CO2重さ」へ変える倍率が必要になります。
1 千m³ のガス × 2.05 t-CO2/千m³ = 2.05 t-CO2
──この 2.05 が“体積をCO2の重さに置き換える倍率”です。
要するに――
- 換算係数:ガス量をエネルギー量へ変換する定数
- 排出係数:ガス量をCO2排出量へ変換する定数
ガスの種類や年度によってこの定数が微妙に変わるため、毎年、環境省が
「今年はどの倍率を使って計算してください」と公式に数値を提示している――
これが温対法・省エネ法でいう係数一覧の正体です。
2. 最新(令和7年度提出用)ガス事業者別 CO2排出係数
環境省が 2024 年 6 月 28 日付で公表した令和6年度実績(令和7年度報告用)PDF から主要事業者を抜粋しました。
ガス事業者名 | 基礎排出係数 (t-CO2/千m³) | 調整後排出係数 (t-CO2/千m³) |
---|---|---|
東京瓦斯(東京ガス) | 2.05 | 2.05 |
東邦ガス | 2.05 | 2.05 |
大阪ガス | 2.05 | 2.05 |
西部ガス | 2.05 | 2.05 |
代替値(事業者未公表時) | 2.05(省令既定値) |
※ 全ガス事業者の一覧は環境省 PDF/Excel をご参照ください。
3. CO2排出量の計算式
CO₂ 排出量 [t-CO₂] = 都市ガス使用量 [千m³] × 排出係数 [t-CO₂/千m³]
例)東京ガスから月に 0.125 千m³(=125 m³)購入した場合:0.125 × 2.05 = 0.256 t-CO₂
4. 熱量(GJ)への換算式
エネルギー量 [GJ] = ガス使用量 [m³] × 0.045 GJ/m³(13A ガス)
5. 報告実務で気をつける 5 つのポイント
- 年度を間違えない ― ページ冒頭や PDF 表紙で公表年度を必ず確認。
- 料金メニュー別係数 ― 大手事業者はプランごとに係数が異なる場合あり。
- 0 ℃換算と 25 ℃換算 ― 温度補正後の体積へ係数を掛けるのが原則。
- 代替値の利用 ― 公表がない小売ガス会社は省令既定値 2.05 を使用。
- EEGS ポータル入力 ― 事業者コード・係数を手入力/CSV で登録。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 令和8年度報告(2026年提出)用の係数はいつ公開?
例年 6〜7 月頃に環境省サイトへ掲載されます。前年報告提出後に必ず確認しましょう。
Q2. 使用量が MJ 表示の場合は?
MJ 値 ÷ 1 000 = GJ。
排出量概算:t-CO₂ = GJ × 0.0508
Q3. LP ガスと同じ係数で計算して良い?
不可。LP ガスは 3.0 t-CO₂/千m³ 前後と都市ガスより高い値を使用します。
7. ダウンロードリンクまとめ
8. まとめ
都市ガスの換算係数と CO2排出係数は毎年更新され、報告書の正確性を左右する重要データです。まず環境省の PDF/Excel をダウンロードし、契約ガス事業者と使用メニューを確認しましょう。計算自体は 使用量 × 係数 のシンプルな式です。
✔︎ 覚えておきたい代表値
2.05 t-CO₂/千m³(2024 年度実績ベースの省令代替値)
ブックマークのうえ、次年度以降の係数更新チェックにお役立てください!